\((x,y)\)の関数\(f(x,y)\)を
\(df=\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy\)
の形にすることを全微分といい、この形が存在することは微分可能であるという。


この式こそ、複雑な原因(多変数)が絡み合って一つの状態を1通りに決めている(関数になっている)ときに各々の原因に分解する(各変数の微小変化に還元する)ツールです。1変数の一次近似に慣れていれば直感的には理解しやすいのではないでしょうか。

あと、この場合は2変数しか扱っていませんが、独立な変数ならいくつあっても全微分は偏微分係数と変数の変化分の積を足したものになります。

\(df=\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy\)の証明を考えてみましょう。なかなか極限と微分の定義に慣れていないと面倒なので、経済畑の人間は(とくに最初は)直感的な理解でもOKだとは思います。

【証明】
\(\Delta f\)は各変数の変化前と変化後の差であるから
\(\Delta f=f(x+\Delta x,y+\Delta y)-f(x,y)\)
\(=f(x+\Delta x,y+\Delta y)-f(x,y)\)
\(=\frac{f(x+\Delta x,y+\Delta y)-f(x,y+\Delta y)}{\Delta x}\Delta x+\frac{f(x,y+\Delta y)-f(x,y)}{\Delta y}\Delta y\)
微小変化では
\(df=\lim_{(\Delta x,\Delta y) \to (0,0)}(\frac{f(x+\Delta x,y+\Delta y)-f(x,y+\Delta y)}{\Delta x}\Delta x+\frac{f(x,y+\Delta y)-f(x,y)}{\Delta y}\Delta y)\)
偏微分の定義から
\(df=\frac{\partial f}{\partial x}dx+\frac{\partial f}{\partial y}dy\)


全微分の意義はなんでしょうか?
一つはたくさんの変数に支配される世界を考える時、どの変数が変化したかに気を取られることなく議論できるようになる、というのは大きいと思います。いちいち「この価格が上昇したときの別のやつの需要は?」など考えなくても一般的な議論が可能であり、記述も厳密になります。もちろん\(dx=0\)を代入すれば\(x\)が変わらない状況が議論できるので一般性を失わないんですね。これはうまく伝えられないのでそのうちに感じてください(笑)

もう一つはいろいろな公式を機械的に導ける点です。覚えにくい公式もテストの場やちょっとした思索のときに公式を簡単に作れる、というのは手間を節約したり検算するときに有効です。
この公式の導出でよくあるパターンを例題でチェックしましょう。

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