これまでの微分は変数が一つしかないような関数を扱ってきました。しかし実際は多変数関数を上手に扱えることが経済を分析するうえで非常に重要です。偏微分はそのうち一つの変数にだけ注目するという技を使い、こうした一変数関数の微分と多変数関数の微分をつなぐ役割を担っています。

微分がさらに厄介ななったバージョンみたいな認識はあるかもしれませんが、使えるとそれはもう便利な道具です。

こんな時に便利
・なにか変化が起こった。何種類かの原因に分解したいなー
 ⇒偏微分係数を使った計算で簡単に分解できる!
・ほかの条件を変えずに政府がこの変数を変えるとどうなるんだろう
 ⇒まさに偏微分
・この材料とあの材料のうんぬんかんぬん
 ⇒これも偏微分


かなり便利なので、さわりくらい高校でやってもいいとさえ思います。というか偏微分を高校でしないせいで、高校でまともな経済学を教えられず、なんか謎の「政治経済」なるへんな科目に甘んじるしかないのか…

とにかく、多くの変数を扱う経済学に向き合うのなら偏微分は欠かせません。

偏微分(二変数関数)
2変数関数\(f(x_1,\dots ,x_n)\)で
\(\frac{\partial f}{\partial x}=\lim_{\Delta x \to 0} \frac{f(x+\Delta x,y)}{\Delta x}\)
と定義し、この演算は関数\(f\)を\(x\)で偏微分するという。


なにをやっているかというと、\(y\)を定数扱いにして普通の微分(常微分)をしているだけです。\(f\)はふたつの要因があって変化する関数ですが、そのうち\(x\)の要因のみに注目して変化を求めるので厳密には\(df\)とあらわせないので偏微分といい、\(\partial\)の記号を使って区別します。

ちなみに\(\partial\)は「パーシャル」「ラウンド」と読みます。

一般化すればこの通り。
偏微分
多変数関数\(f(x_1,\dots ,x_n)\)で
\(\frac{\partial f}{\partial x_i}=\lim_{\Delta x_i \to 0} \frac{f(x_1,\dots ,x_i+\Delta x_i, \dots ,x_n)}{\Delta x_i}\)
と定義し、この演算は関数\(f\)を\(x_1\)で偏微分するという。


訳わかんなさが急に上がります…が、数学を多分野に応用するとき、「解く」というより「記述する」「伝える」「読む」という言葉の要素が強くなります。こういったものの読み方を身につけることが経済学でもやくにたつので解読してみてください。


あと、偏微分の計算の時は、一変数関数の微分公式から直感的に成り立ってほしい公式で成り立たないものがあります。次回はそれを解いてみて偏微分の演習にします。
ちなみにこの公式はミクロではさっぱりですが、マクロでは重要な位置を占めます。

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