速度(時間微分)
変数\(x\)を時間で微分した\(\frac{dx}{dt}=\displaystyle \lim_{\delta \to 0}\frac{x(t+\delta)-x(t)}{\delta}\)を\(x\)の時間微分という。
\(x\)が変化する速度をうまく記述することができる。


時間とともに変数が変化していく現象はさまざまな分野で関心を集めます。
時間が経ったときの物体の位置は?人口のサイズは?経済成長率は?個体数の変化は?反応物の濃度は?患者の数は?…と枚挙にいとまがない、といった感じです。
これを非常によく表す数学のツールとして時間微分は重要です。

例えば人口変化をモデル化して記述してみます。
時点\(t\)における人口が\(P_t\)人であり、出生率\(b\)・死亡率\(d\)であるとしますが、人口が大きくなりすぎると衛生状態を損ねて死亡率が上がる(\(d=d(P)\))とします。(厳密には、人口は膨大であり稠密な正の実数をとりうると考える)
ここで\(\frac{dP}{dt}=bP-d(P)P\)と記述できます。長々した文章をスッときれいに表現できていると思いませんか?

この時間微分をつかう表現のメリットは
(1) 表現がすっきりする(個人差アリ)

(2) 初期条件を与えればいつごろ変数がどんな値をとるかわかる
たとえば、さきほどのモデルで今の人口を1億3000万人とすると何年後に何人になるかを求めることができるようになります。これってすごくないですか?
(厳密には微分方程式はどんなに頑張っても解けるわけではなく、解けない場合は時間\(t\)における変数の値を求めることはできません。ただし、その場合でも時間微分の符号によって変化の傾向は分かるし、なによりも(3)で消化するような収束先の状態を知ることはできます。)

(3) 変数がストップするセカイを知ることができる
時間微分が0になるよう収束していくのが普通です。そのような時に変数はどんな値をとるのかを知るのは現象を解き明かすカギになることが多いです。例えば先ほどの人口のモデルでは\(\frac{dP}{dt}=0\)では\(b=d(P)\ (\because P\neq 0)\)となり、これを\(P\)について解ければ、人口はどこに向かっているのか予測できます。


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