商品を取引する市場(財市場)において需要と供給が完全に一致する(均衡)のはどういうときでしょうか?
結論からいうと\(S=I\)という貯蓄が投資に一致するという簡素かつ不思議な条件になります。
ところがこの均衡条件はケインズ経済学、マルクス経済学、古典派経済学、近代経済学など広範な分野で共通しています。(解釈が異なり違う結果を導くことはありますが…)
これを導くために簡単のために激しい仮定をおきます。
仮定1:財は1種類しかない
仮定2:財は貯蓄にも消費にも使える
仮定3:政府は存在しない
仮定4:経済は閉鎖系(貿易をしない)
ただ、仮定2以外はなくても事情は大きく変わりません。
\(供給=生産Y\)
\(需要=消費C+投資I+政府支出G+純輸出NX\)
ただし政府が存在しない仮定3から\(G=0\)、閉鎖系の仮定4の\(NX=0\)から
\(需要=C+I\)
貯蓄\(S\)の定義から\(S=Y-C\)が成り立つのでさらに
\(需要=Y-S+I\)
需要と供給が一致するのが均衡なので
\(Y=Y-S+I\)
よって\(S=I\)
「貯蓄=投資」という関係式が導けます。
では、仮定について考えてみます。
仮定1を外した場合どうなるでしょうか。
この場合最も簡単なのは\(Y,C,I,S,G,NX\)をすべて財の数である\(n\)次元のベクトルを考えることがですね。
ベクトルで処理してもスカラーで考えた場合と同じ演算を行うことができるので均衡条件は\(S=I\)のままです。この場合すべての財について均衡する必要があるので相当強烈な条件ではありますが、問題ありません。
仮定3、4の場合は\(S=I\)が条件にはなりません。面倒ですが、(S=I)+G+NXというおまけのおおい条件になります。
ただ、国によっては\(G,NX\)のサイズは大きくありません。例えば日本でもGDPにしめる輸出は数%に留まっており\(NE=0\)は現実離れした仮定とは言えません。また、民間の取引にくらべて\(G\)がずっと小さい場合は\(G=0\)も充分といえます。
なので(S=I)+G+NXを採用するか、\(S=I\)にするかはその時々や論理展開によるという感じでしょうか。
ただし、以降財市場が均衡するといえば\(S=I\)を想定することにします。
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