消費者の行動を分析するうえで非常に重要なツールが二つあります。費用と収入に関わる予算制約線と効用に関わる無差別曲線です。これまで選好、効用について触れてきたのでここではまず無差別曲線について簡単な導入をします。

無差別曲線
同じ効用水準を与える財の組み合わせの集合。
あるいは、その組み合わせを表す各点を曲線でつないだもの。



ちょっと抽象的ですから、一番簡単な2財モデルを具体的に考えてみます。
偶然立ち寄った喫茶店にコーヒーと紅茶があります。コーヒーよりは紅茶のほうが好きななので紅茶を3杯飲みたいと思ったとしましょう。しかしこの喫茶店では紅茶がすぐに売れてしまい、もはや2杯しかだせません。では、紅茶2杯で我慢しようと思いますが、ふとこういったことを思いつきます。

「紅茶を2杯しか飲めなくてもコーヒーを飲んでくつろげる!」

紅茶の方が好きだったので紅茶1杯我慢するためにはコーヒーを2杯飲みたい。言い換えると、コーヒー2杯、紅茶2杯の満足度は紅茶3杯の満足度に等しいということになります。コーヒーの杯数\(a\)、紅茶の杯数\(b\)を用いて式で表すと
\(u((a,b)=(2,2))=u((a,b)=(0,3))\)
となります。もっと細かく紅茶2.5杯などと考えていくと色々な点をab平面上に書くことができます。この点をすべてつなげたもの、それが無差別曲線です。
また、紅茶の代わりにコーヒーを飲んで満足するというのはのちに説明する限界代替率の考え方に通ずるものがあります。

あと、なかなかどうでもいい補足ですが、「差別」というなかなか激しい言葉にイマイチ先ほどの定義にピンとこない人がいるようです。「無差別」というのは「区別しない、できない」といった感じの意味です。

じつは、これ選好の一番最初に出ていた言葉でした。AとBが無差別、というのは\(A\thicksim B\)とかくルールでしたね。
つまり先ほどの例でいうとコーヒー2杯、紅茶2杯を消費する状況と紅茶3杯を消費する状況が区別できない(\(コーヒー2杯、紅茶2杯\thicksim 紅茶3杯\))ということになります。

そういう意味でこういう理解も可能でしょう。
無差別曲線
消費者にとって満足度が一緒で「どっちでもいい」と思う消費の仕方を集めたもの。




それでも具体的な形をイメージできないのでイマイチ分かりにくいかもしれません。そこで次に非常に簡単な線形効用関数を扱いながら具体的に無差別曲線の性質を見ていこうと思います。


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