では実際に行列表記の連立一次方程式を解いてみましょう。
とりあえず手順を示しますが、慣れた連立一次方程式の解き方に対応させて理解するのがコツです。


\(\left(\begin{array}{c|c} 係数A\ |\ 定数b \end{array} \right)\)ととりあえず書く。

最終目標は
\(\left(\begin{array}{ccccc|c}
1 & & & & & a \\
& 1 & & & & b \\
& & \ddots & & & \cdot \\
& & & & & \cdot \\
& & & \ddots & & \cdot \\ & & & & 1& \cdot \\ \end{array} \right)\)
というように対角成分に1をぎっしりつめたものと何か定数の列みたいな形にすること。

そのために、
(1) 行全体を定数倍してもOK
(2) 行同士で足し引きしてもOK。
(3) その時に一時的に全体を定数倍してもOK
というルールを使って変形していく。
このやり方をガウスの消去法とか掃き出し法という。


なんとなくしんどいですね。なのでやはり慣れた連立一次方程式の解き方に対応させながらやってみるのが大事です。

問題は先の
\(3x+2y=0\)
\(x+y=5\)
を行列表記にした
\(\left(\begin{array}{c} 3 & 2 \\ 1 & 1 \end{array} \right)\left(\begin{array}{c} x \\ y \end{array} \right)=\left(\begin{array}{c} 0 \\ 5 \end{array} \right)\)を使います。



まず、\(\left(\begin{array}{c|c} 係数A\ |\ 定数b \end{array} \right)\)に当てはめます。
\(\left(\begin{array}{cc|c} 3 & 2 & 0 \\ 1 & 1 & 5 \end{array} \right)\)


では実際に対角成分を1にしていきます。途中でそれ以外の成分を0にすることをお忘れなく。
最初は2を消しにかかります。

2行目を2倍して1行目から引きます。
\(\left(\begin{array}{cc|c} 3-2\cdot1 & 2-2\cdot1 & 0-2\cdot5 \\ 1 & 1 & 5 \end{array} \right)=\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & -10 \\ 1 & 1 & 5 \end{array} \right)\)
この操作は\(y\)の消去にあたります。
\((3-2)x+(2-2)y=0-10\ \Rightarrow x=-1 \)
\(x+y=5\)




今度は1行目を2行目から引けば対角成分に1があるだけの形にできますね。
\(\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & -10 \\ 1-1 & 1-0 & 5-(-10) \end{array} \right)=\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & -10 \\ 0 & 1 & 15 \end{array} \right)\)
こんどは\(x\)の消去を行列の中でやっていることになります。
\(x=-10 \)
\((1-1)x+(1-0)y=5-(-10)\ \Rightarrow y=15\)




見比べてみると一目瞭然ですが、
\(x=-10\)
\(y=15\)
\(\left(\begin{array}{cc|c} 1 & 0 & -10 \\ 0 & 1 & 15 \end{array} \right)\)
このように何かの定数の列がそれぞれの変数に対応しています。

こうして機械的に多変数の連立一次方程式も解くことができます。
ただし、どんな連立一次方程式も解けるわけではないのと同じく、行列表記にしても解けないものもあります。
証明は避けますが、解ける条件は
\(|A|\neq 0\)
です。おかしいな、と思ったらチェックしてみましょう。

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